Darker
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Darker.....
神出鬼没だとは思っていたが、まさかこんなタイミングで私の前に現れようとは…。 これはこれは、随分彼を侮っていたらしい。タオル一枚巻いたのみの自分の腰に得物はなく、その他武器になりえそうなものは何も無い…。そもそも、私は彼には太刀打ちできる気がしないのだ、昔から。 「え……どうして此処に……」 漆黒の瞳、漆黒の衣。全てが闇に溶け込むためにあつらえたかのような色、明らかに日中よりも暗闇を好んで生きているといった風合い。オマケに、彼にコミュニケーション能力は皆無であるから、私が言った言葉をまともに受け止めてくれたことは恐らく…ない!断言しよう。 私みたいな人間とは話もしたくないのか。否。わざわざ私の家にいるくらいだから、せいぜい私を困らせて、腹の中で私を嘲笑しているんだろうな。全く、いつの間にこんなのに好かれたんだか……。 「良かったら……静かにそこを…いや、この家から、退いていただけると、こちらとしても穏便に事を進められて助かるんだけども…」 「………。」 そして相変わらず彼は何を言うわけでもなく、黙って私を見つめていた。その口元が僅かに歪んでいるような気がするのは私の色眼鏡なんだろうか。背中をつめたいものが勢い良く駆け上がり、逃げ出したい衝動に駆られる。しかし、ここで目を離してしまったら次に彼がどんな行動をするのか把握することが出来ない!って…アレ、 「……!!」 私が真剣に思案しているうちに、唐突に彼が一歩私に詰め寄ってきた。何も、言わずに! 「(タ、タンマタンマタンマァァア!!)」 驚きのあまり腰を抜かして、したたかに尻を床に打った。とても痛かった。けれど、そんなの気にしている場合じゃない。早く、助けを呼ばないと…! 「…!」 ああ、どうしてもっと早く助け呼んどかなかったかな、私のバカ☆ 私の口はパクパクと空気を食べているだけで、喉が上手く動かなくなってしまっていた。だから嫌なんだ、彼に会うといつもこうだ。結局一人で太刀打ちなんて出来ないんだ。 彼はまた立ち止まってじっと私を見つめている。タオル一枚なんて、今の状況では全く取るに足らないことだった。どっちみち私に助かる術は無いのだから。 「……!!」 ジリ、と後ろに下がると、私の後ろは無常にも壁だった。ここが忍者屋敷だったら壁がぐるりと回ったりするのかもしれないが、残念ながら此処は普通のアパートであった。 まさに絶対絶命。もうどうにでもなれ。半分あきらめて、顔を手で覆って(指の隙間から見てたけど!)、その場にうずくまった。 お父さんお母さん。ごめんね、弱い子で……。 アーメン、ととりあえず十時を切ってみたけど、私は別に何の宗教でもないことを思い出した。でもまぁいいか、なんでも。とりあえず神様呪っとけ、アーメン。 ベ シ ッ 思いっきりマイナス方面に回転し続けていた私の思考を断ち切る音が、聞こえた。 何だかよく分からなくて、 覆っていた手を、 退けた。 「何やってんだ、アホ女。」 「…し……す、け…!」 雑誌片手に佇む高杉と、原型を留めていない彼、イコール通称G(見なきゃよかったァァ!)が同時に存在していた。 勝ったのか、この男は。ただの雑誌一つで。不意に胸が高鳴る。 「ああ、神様仏様晋助様…!」 これはもう神様以上に讃えるしかなかろう。普段碌な事しないなこの男度No.1を、出会ってからこれまでの間ずっと独占してきた晋助が…今はとても頼もしく見えた。 「ところで…おめェ…」 「はひ?」 「その格好、誘ってるってとって間違いはあるめェな?」 一瞬で崩れ去った。(私のトキメキは……) 「ちょ、待ちなさい。冷静になりなさい。アンタはソレと違って口も耳もちゃんと機能すんでしょ!コミュニ―」 「するに決まってるだろ…どこもかしこもな。心配には及ばねェよ。」 「ノー!ノンノン!堂々たる勘違い!万年発情期!何自信ありげに語ってんの!?G以下!G以下!(一応伏字!)」 アーレー、私って助けてもらったはずじゃぁ… ていうか手に持っていたその雑誌、私が今日買ってきたばっかのOEDOじゃ、ないか…? I can't escape, Help! 一瞬でもGを高杉かと勘違いしてしまった貴方は負けなんですよ(何 |