いきなり鳴りはじめるケータイの着信。

なり続けるベルがうるさい。疲れてるんだ、寝かしてくれよ。

ケータイを手にとって小窓を除く。

番号をみて、小さな溜息とともにオレは受話器をとった。










































前をぶコール














































開口一番、聞こえてくるのは懐かしい声。
高校に入ってからはめったに連絡をとることもしてなくて。
いやに懐かしくて、でも、忘れたことの無かった声。






「やっほー芭唐!久しぶりじゃん。」

「あぁ、か…。」

かって何よ!ま、いいか。元気してた?」







毎日疲れてる。

今の状態を簡潔に説明するならそれがいちばんいい。
けど、それを言ったらテンションさがるし。

電話だったのが幸い。

疲れてるかどうかなんて、声じゃわからないし。








「元気も元気。あ、でも部活はサボり気味ー。」

「だめじゃん、ちゃんとがんばらなきゃ。こっちじゃ冥ががんばってるよ。」







こういうときにあのバカの名前を出さないでほしい。
こっちの気も知らないで…ってオレが教えてないだけなんだけど。


「アイツの名前なんか出すなよ。気分ワリーな。
 オレはオレでサボりライフを楽しんでるからいいよ。」

「あはは、芭唐もちょっとはヤル気ださなきゃだめだよー」

「はいはい、お前はいつも元気ってかんじだな。どうしたんだよそのテンション」

「だって今日は…冥が新しい……っと、これは秘密だった…。
 まぁまた今度練習試合でもするだろうからその時によく観察してよ。」


へーへー。

十二支に行くって聞いたときから、少しは感じてた。
中学んときからソフトボールやってたから、顔見知りでもおかしくないし。
そういえばあいつの友達に情報網なのがいたなぁと今更思う。

あいつは、冥を追いかけていったんだろう。

だからオレはあえて男子校を選んだんだ。
お前以外の女子のことをなるべく考えないように、
できることならお前意外を思い出さないように。


なのにオレのことなんかちっともしらないでお前は…。




「……お前アイツのこと好きなんだ?」

「…なんでいきなりそうなるのよー!…まぁ良いやつだとは思ってるけど。
 芭唐こそ、男子校で出会いとか無いんじゃない?」

「オレの場合は、出会う必要ないからな。」

「え?何、好きな子いるの?」

「そんなの聞いてどうするんだっての。まぁ、今度華武に来た時にでも教えてやんよ。」





教えるきなんてさらさらないが。


だって、お前はオレのことなんかひとつも知らない。

オレのことなんか明日は忘れるじゃんか。





だってお前の頭には冥しかないんだろ。







だったら、オレもさっさとあきらめればいいのに。











「オレは、あいつにはまけねぇから。」

「どうかな、冥もがんばってるし。十二支が華武に勝つときがくるかもよ?」





ほら、な。



望みなんて無いんだよ。
いくら待ったって来やしない。

なのに、それでも、オレがお前を想う理由って、なんだ?






「でも、芭唐もがんばってるんだよね。こないだ見たとき、凄かったよ、芭唐。
 いつもやる気無いくせに野球のときばっかりあんなふうにかっこよくてずるいしさ。
 ……ねぇ芭唐、今疲れてる?」


何でだろう。


「いや、そんなこたねぇけどよ―――」

「そぅ?芭唐って嘘つくのうまいからあたしだまされちゃうしさぁ、
 何か隠しててもあたし気づかないから率直に言ってくれなきゃやだよ?
 ……つかれたら、休んでもいいんだからね。」



お前と話してると、安らぐんだ。




本当にみてるのがオレじゃなくても。
そのさりげない一言が、どれだけオレにとって嬉しいことか、
そのさりげない一言が…

どれだけやさしさをもってオレにつたわってくるか。





「大丈夫だって。そんなことなくてもいつも部活サボって休んでるから休息は十分よ。」




そう、それならよかった、と笑いながらいうお前のことばを見届けて、
忙しい中ありがとうと締めくくりのことばに


「じゃあな。」


たった一言そっけなく返しただけで終わった。





電話を切ったあと、妙に泣きたい気分に駆られた。
涙こそ流さなかったものの、きっと目は赤いだろうな。


それはの優しさからでも、冥に対する嫉妬心からでもなく

ただお前を思うオレの気持ちがあふれたからだった。



























































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あとがき

短い。芭唐ショートショートでした。
BAMPの「ベル」のイメドリとか言ってみたりする。
まだミスフルのキャラをつかめてない様子。
もっと慣れないと…。


*輝月