あたしの名前は空。華武高校2年で野球部のマネやってます。
今はワケあって彼とゲーセンに来てるんだけど……
いくら彼といったって、あたしにとっては真剣勝負!
なぜなら今…あたしにとっては一世一代の賭けをしてるからなのです…
恋 の 魔 法 を 唱 え ま し ょ う
「うぁー!!またあたしの負け!?」
現在の時刻は七時四十五分。
夕食時を少し過ぎて、ゲーセンには小学生の姿が消える。そして、中学生も点々になり始めた頃。
この時間帯、ゲーセンはたいてい不良と高校生と、一部のオタクが占領する。
おかげでゲーセンには徐々に居心地の悪い雰囲気が漂い始めていた。
その空気の中で、さっきから騒いでいる(のは一人だが)ひときわ目立ったカップルらしき二人組みがいた。
ひとつのゲームをほぼ占領してさっきから何度も繰り返している。
「……やっぱ空ってゲーム不得意気じゃん?(¬0¬)
めったにゲーセン来ないオレに負けるなんてちょっと笑っちゃう気〜(^0^)」
彼はあたしと同じく華武高校2年、朱牡丹。
ここら辺じゃ名のある華武の野球部レギュラーにして、あたしの彼氏。
「えーっ!そんなのありえない!もっかいやるッ!!」
「もう一回…さっきからそれ10回も言ってる気じゃん(~_~;)
それにもう直8時なるし、空10連敗気だし。」
「やだ!まだやるのー!」
「む・り!もう金なくなる気〜(~_~;)今の高校生はそんなに裕福気じゃないしね。
ってことで……権利はオレのものってこ・と・で!」
「……うー……わかりましたよ…」
このゲームは得意だったのに。そう頬を膨らましてスネた。
するとのほうから手が伸びてきて、あたしの手をにぎったのだった。
悔しいけど、こうするだけでちょっと気分もよくなるってやつ。
小さいでも、更に小さい空となら手を繋いでもきちんと身長差が出来る。
それが彼にとっては嬉しくて仕方がないらしい。
「(ふぅ…実は裏技使っちゃってたりして(^ε^;)。)」
そんな腹黒なことをしていたに気づくハズもなく空は歩いていたのだった。
「ハイ、到着気だよー(^0^)♪」
空はの自転車から飛び降りると、店の看板を見て固まった。
「ここって……辛いのがいっぱいある店だよね……」
「あたり前〜♪オレ辛いの好き気だもん。ま、権利はオレのものだから否定する権利はなさ気〜(^曲^)」
はーぁ。
空は深いため息をついた。辛いものは小さい頃から今に至るまでずっと苦手だというのに。
こんなことになるなら、あんな賭けしなきゃ良かった。
空の両親は海外で仕事をしている。
今までは色々都合よく行って日本に居られたけど、今度という今度は向こうへ赴任しなければならなくなった。
本当は空もそれについていく予定だったらしいが、
断固たる空の態度に両親も残ることを許さずを得なかったらしいとか…
両親の発った翌日、その事実を知ったははっきり断言した。
『大事な彼女を一人暮らしさせるなんて心配で仕方ない気。(`д´)』
超過保護なの思考により、空は朱牡丹家にお世話になることになった。
しかしの両親まで北海道に行ってしまって、結局二人暮らしのようなものだった。
その時問題だったのが食事。
実は空もも料理が苦手だった。これは痛い。
しょうがないので外食に決めたのだが、がどうしても「激辛ギョーザ」という
名前を聞いただけで辛くなりそうな店に行きたいと言い出した。
『だ・め!あたし辛いの苦手だって知ってていってるの!?』
『だってオレ二日に一回は辛いものたべないと死ぬ気〜(´□`)』
『…むり。』
『……じゃあさー…こういうのどう?』
そして決まったのが、ゲーセンで勝負。
『勝ったほうが好きな店にいける気!』
その時空はためらいもなく返事をした。
『よし、のった!』
そして、先ほどに戻るのだった。
予期しない負けを連発した空は「激辛ギョーザ」の前でいまだ固まったままだった。
「ほら空、何してる気!早く行く気〜♪」
に手を引かれて中に入ったはいいけど。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「てかコレ何。このギャグを狙ってるのかと思っちゃうほどの品名。」
隣でボソりと呟く空をシカトしてが読み上げ始める。
「えっと、『激辛スープ』2つ、『Hotカレー』と『スパイシーカレー』で。」
「はい、かしこまりました。」
そこでひらめいたらしい顔をした空が、去ろうとする店員をとっさに捕まえた。
「あ、あたしのお水はビールジョッキで。あとがんがんに冷やしてください。」
店員は首をかしげると、は、はぁと言って去っていった。
とたんに画爆笑し始めた。
「プッ……プククッ…(@w@;)」
「なッ!なによ!」
「だって…み、水をビールじょッ……プフーッ!∵ゞ(゚ε゚ )」
「そ、そんなこといったってー!それくらいは最低ないとね…」
「でもあれ、ココの店のなかで一番辛くない気なやつだよ?」
「あたしにはこの店の基準となる辛さが高すぎるのよ!!」
そして待つこと15分。
「おまたせしましたー。」
空との前に並んだ4品。どれも辛そうに湯気をのぼらせていた。
「イ、イタダキマス……」
「さっそく食べる気〜(^0^)♪」
がスプーンをカチャカチャ言わせながら、着々とカレーを食べ進める横で、
空はまったく手をつけないままカレーとにらめっこを始めていた。
「空…何してる気。食べなさ気?(~_~;)」
「食べッ…る…けど……ココロの準備がね……」
「そんなこといてたらさめる気!さめたらカレーもおいしくなさ気〜(~_~;)
ホラ、さっさと食べる気!!」
それでも食べ始めない空。それを見たはニヤりとわらった。
「ふーッ…じゃぁ空、もうちょいこっちきて。」
「え?うん…」
空とは中腰で、机の上で顔を近づける形になった。
「で?なにすんのさこんなことして…てかこの体制キツッ!」
「辛いものでも食べれる方法教えてやる気。」
「へー…で、何?」
のいいっぷりからしてあまりイイ予感もしなかったので空としては早く座りたかった。
でも、と視線がかち合ってるせいでそれも出来ない。
すると、突然の顔が近づいてきた。
ちゅ。
「……な、ななななななななッ!?何すんの!!」
「え?空が辛いもの克服する手伝い?」
「や、そうじゃなくて…」
「あぁ。今のね。そりゃ決まってる気!口うつs「やっぱもういいわ!」
わーッ!何よってば急に変なこと言い出したと思ったらそういうわけ!
それにしても…いつにもましてやり方が強引なような。
「何もこんなトコでしなくたって…」
個室へ案内してくれた店員さんに心からの感謝の念をこめつつ、そういった。
「ま、細かいことは気にしない気♪」
「あたしがするわッ!」
顔を真っ赤にした空を見ながら、はニヤりと笑っていった。
「…オレさ、急にデザート食いたくなった気。(¬0¬)」
「えっ?あるの!?」
「家に帰ったら……ある気。」
「やったぁー!辛いの食べたから甘いのがいいなぁ…」
「ヘェ。空がそう言うなら、甘いので♪」
「……え?」
「や、な、何でもなさ気(^0^;)」
今日も明日も明後日も、そのまた次の日もずっと
こんな風に空とすごしていけたらどんなに楽しいだろう。
あ、でもまずは今日のデザートから楽しんでいかなきゃいけない気♪
空の望んだ甘いデザートを。
+++++
あとがき
やっちゃった…。最後の文意味深ですが…そこはまぁご想像にお任せということで♪
とりあえず、ここまで読んでくださった空様、
色々修正してくれた流星様、ありがとうございましたw
+鬼亞