「珍しい………」



警戒心皆無。

いつもの凛としている面立ちは何処へやら、安らかな顔ですやすやと眠る彼女。


別に、が寝ているのは構わない。けれど、こんなところで寝るのは止めて欲しい、と思う。

いつ誰が入るかも分からない自分の部屋に、こんな無防備に寝るなんて。仮にも女の子なのに。

そんな俺の心配を知る由も無く、は相変わらずすやすやと眠り続けている。

もしも土方のヤローが俺より先にを発見していたら…そんなことを考えたら恐ろしくて思わず顔が引きつってしまった。

言わずもがな、土方のヤローはに惚れているらしかった。普段の行動で、わかる。





「(巡回早めに切り上げて正解だった…)」





はいつも、ひょっこり真撰組屯所に来ては俺か土方、山崎あたりに顔を出して帰っていく。

誰が目当て、と言う風ではないから誰を訪ねるかはその時の気分とか、そんなところだろう。





きっとこうして寝ているのも、気分なんだろう。

そういう人だ。

別に俺の部屋で寝たいと思ったとか、そういう意図のあったわけではないんだろう。



全く、それでもそんな女の為に布団をかけてやり、こっそり衣服の乱れを直してやる俺は、どこまでも馬鹿だ。





「……憎い女でさァ…」





ポツりと、愚痴を零す。

当然眠っているはその言葉を聞くことも、応答することもない。







「あんた、本当は何が目当てなんですかィ?」




独り言だ。ただ、宙に向かって言葉を投げているだけ。




「本当は、土方が目当てだったりするんですかィ?」





そう、ただの独り言であるはずなんだ。なのに、何でこんなに緊張しているんだろう。

こんな疑問が沸いてくることさえ、鬱陶しいのに。



「(……馬鹿馬鹿しいや…。)」



そう思ったと同時に押し寄せてきた脱力感に身を任せ、の隣にごろんと寝転がった。


半分うつ伏せて寝ているの表情は良く見えないが、閉じられた目が片方だけ覗いている。

睫毛長いや、とかベタなことを考えてしまうようなキャラじゃなかったはずなのにな、俺。






閉じられた目を見つめているうちに、ふと脳裏に軽い悪戯心が芽生えた。





のそり、と起き上がると、上からを見下ろしてみる。

そっと彼女の体の向きを仰向けにさせて、その脇に膝を突いた。

綺麗な寝顔を、暫く眺めていた。



「…渡したく、なくなるってもんでさァ。」



そっと彼女の唇を塞ぐ。ただ唇に唇を宛がうだけの、軽いキスを。





誰にも渡したくない。こいつだけは、絶対に誰にも渡したくない。

もしが、他の男をスキだったとしたら、自分は本気でその男を殺そうとするだろう。


それくらい独占欲が沸いて来るんだよ、お前だけは。






目覚めるなよ眠り








「+星に願いを+」二周年記念企画「星夢祭」にて

written by 輝月流星

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