何処まで行けば逃がしてくれるのか。

何処まで行けば逃げ切れるのか。


そんなことを考えんのももうめんどくせー。


最後に残ったのはこの場所くらいか。



いい加減静かにしてくれ。



お願いだから、安眠妨害しないでくれ。

























































































































「ふぅ……やっと休める………。」


こんなことになるのなら囲碁の相手なんてしなけりゃよかったんだ。

アイツの負けず嫌いな性格を一瞬でも忘れて勝負を受けちまったオレも悪ィけど…。


負けず嫌いだからと言って、ここまでするか?フツー。




「全く…こっちの身にもなれよあの馬鹿………」



疲れ切った身体が眠りに落ちるのにそう時間は要らなかった。














「どこいったーあの馬鹿丸!」

いや、仮にも頭脳戦で負けているのだから馬鹿ではないけれど。

「途中で勝負を投げ出すって一体男としてどうなわけ!?」


イライラした口調と足取りで探す。

彼を探すのはもうこれで何度目だ。

負ける度に「もういいだろ」と言って逃げてしまうものだから数え切れたものではないが。


「……っはー…あ、そういえば碁盤出したまんまだった。」

一回取り合えず家に戻ることにした。


すると、碁盤を置いていた庭のすぐ脇の芝生にシカマルが寝ていたのである。

それも家の中からでは丁度死角になる場所だ。

一度逃げて、また戻ってきたのだろう。



「……シカマル…めーっけ。」

無駄な労力を働いたなぁと苦笑し、はその方向へと駆け出した。






















ふと、悪寒に目が覚めた。

目が覚めるといっても意識だけで、まだ目まで開かない。


「さーて…あの馬鹿女はどうしてるか……」

「へぇ。それはあたしのこと?馬鹿丸。」



・・・・・・


沈黙。




「うおっ!」

「……驚き様がまたむかつくわね」



目を開けた瞬間にその人物がいたせいで思わず悲鳴を上げた。

否、只純粋に間近に顔があったからかもしれない。



「……顔近いんだっつの…」

「なんか言った?」


は尚も不機嫌そうに頬を膨らませると、


「第一シカマルが相手してくれないからわるいんじゃない…」

不意に、目が涙ぐむ。


「………あたしと囲碁やるのがそんなに嫌な訳。」


あたしが悪いんだってことくらい、分かってる。

すごい我侭言ってるんだっていうのも、分かってる。



だけど、ここまで冷たくされると、心配で










君に本気で嫌われてるんじゃないかって、心配で。














「………」


シカマルは何も言い返さない。



「はいはい。昼寝の邪魔して悪かったわね。もう、囲碁やってくれなんていわないから安心してよ。」

おやすみ。そう告げるとはもと来た方へ踵を返して歩き出した。


が、服を引っ張られて後ろにのけぞる。



振り返ると、シカマルが至極不機嫌そうな顔をしてたっていた。


「説教?やめてよね、そんなめんどくさいこと。」

「お前なぁ……」

はぁ、と呆れた顔でため息をつく。


「ホント、安眠妨害もいいとこだ。」


申し訳ない気分になってが首を竦める。


「そんな顔してっから…おかげでお前のことしか考えられなくなったじゃねえか。」

「え?」



次の瞬間、肩をぐっと後ろに引き寄せられて、バランスを崩す。

「きゃぁぁ!」

仰向けに倒れこんで、少し背中を打った。

「痛っつー………っておい!」

仰向けになった、の腰にシカマルが腕を回す。

そのまま抱き込まれて、は丁度シカマルのあごの下に頭を置く体勢だ。


「安眠妨害してくれたお礼。」

「で、この状態は何?」

「何って…抱き枕。」


シカマルはひょうひょうと言うと、そのまま寝息を立て始めた。


「だ、抱き枕って……」

恥ずかしくて、心臓が破裂しそうだ。第一、こんなに密着するのは初めてで。

「でも…よかったっちゃよかったのかも………」


少なくとも、嫌われてないってことはわかったから。

それで許してあげることにしようか。




暖かな日差しの降り注ぐ昼下がりの芝生の上。

確かにシカマルが気に入るような場所だと思った。








「好き……馬鹿丸。」



















呟いた言葉を、狸ね入りしていたシカマルが聞いていた事は


また、別の話。







































































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あとがき

あんま好きとか言わなそうだしウブなイメージがあります。鹿。

でもその反面黒くなると「全部想定内」見たいな事が…(妄想色に染まりすぎ)

鹿を書く時はヒロインが所々攻めくさくなります。(攻めというか強気)(同じだよ)


*輝月