沢山のこと、話してくれなくてもいいよ。


だから、その分………。



















































「イタチ兄ィー……どこ行くの?」

「……か。どうした?こんな時間に。」

「何だか散歩したくなっちゃって。」





本当は、ただ眠れなかっただけ。

言いようの無い不安が体中を駆け巡ってきて、じっとしていられなかっただけ。



……怖かった。



何かが…離れていってしまうような。

それも、大事な大事な何か。





「そうか…だが夜は冷える。早く帰って寝たほうがいい。」

「眠れないの。」

「……何故だ?」


確かに、少しだけ肌寒い。だけど、本当に寒いのはそんなところじゃなかった。


「分かんない…分かんないけど…家にじっとしていられない。」

「………」

「何かしなくちゃいけないような…何かを引き止めなきゃいけないような気がするの。」



大きな大きな月の逆光でイタチ兄の顔が良く見えない。…また、不安になる。

ねぇ、いつもみたいにその手で頭を撫でて、

『何言ってる。何も心配することは無い』

って言ってよ。そうして優しく笑って、そっと抱きしめてくれるんでしょう?



黙っていられるのが、一番つらい。



「だから、どうしたらいいか分からなくて…。」



どうしよう、あたしは何で泣きそうなの?

喋るたびに、喉の奥に何かが詰まったような感じがして。



「あたし…怖いんだよ……」



その一言を言った瞬間に、目に溜まった涙がこぼれてしまった。

訳も無く泣いたら、イタチ兄を困らせるだけなのに…。

必死で手で拭うけど、直に手もびしょびしょになってしまう。


「…ッん……ふぇ……。」

堪えきれずに、嗚咽が漏れた。


「……。」

「え?…―――」



温かい、肌の感触が頬に触れ、そっと背中を撫ぜる。

最近イタチ兄が任務で忙殺されていたせいで、こんなことをするのはそういえば久しぶりだ。





何かを言われたわけじゃない。

ただ、名前を呼ばれて抱きしめられただけでこんなに安心する。



「…ねぇ、イタチ兄はどこかへ行っちゃうの?」

この温もり

「……」

大事な大事な、たった一つの温もり

「あたしが知らない、どこか遠くへ行っちゃうの…?」

どこへも……

「………」

「何処へもいっちゃ嫌だ…。」



イタチ兄が背中にまわす腕に力を込めたのがわかる。

そのままもっと強く抱きしめて、あたしのこと…殺したっていい。





イタチ兄は、それでも何も言わない。その行動だけで、もうイタチ兄が何を考えているのか位、分かる。



イタチ兄の香りがする。

イタチ兄の体温を感じる。

イタチ兄の鼓動の音が聞こえる。



全てで貴方を感じているこの時間が、永遠であればいいのに。





言葉よりも、伝わるもの。


ねぇ、多くのことを言いはしない貴方だからこそ


貴方が一番よくわかっていること。









だからあたしも、貴方に多くの言葉を望まない。









さようなら、よりも。

イタチ兄の存在が離れていったその時のほうがずっとずっと悲しいけれど……




さようなら、よりも…

イタチ兄の気持ちは、ずっとずっと伝わるから。





「………イタチ兄ィ……」





抱きしめて、体温を感じさせてください。





















葉では埋められない溝をえて





きっとそれが、私達の愛の形。






































































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あとがき

某ミスフルサイト様を見ていて、一度はやってみたかった題名を最後に持ってくるやつ。

うまくいかんです。…どうすれば他のサイト様みたいに綺麗になるやら。

短いですが、一度やってみたかったシーンなので…自己満御免です!


*輝月