目覚めはいつもと変わらぬ平凡なものだった。


























































飾り



























































ゆっくりと体を起こすと、

窓から入ってきた朝日が顔に直撃して目を細める。

今まで十何年生きてきたなかで

何度浴びたかも知れぬほどの、いつもの朝。



ただ今日はいつもより幾分早めに目が覚めたらしい、

家の中はシンとしていてどこか冷たい空気を感じる。

もう、母が朝食の支度を始めていても可笑しくないのだが。

時計を見て、本当に1時間も早く目覚めてしまったことが分かる。



……もう一度ねようか。



布団に身を横たわらせたが、突然の物音に再び身を起こす。

ネコか、何かだろうか。

其れにしては、人間のチャクラの質を感じた。

と、共に、廊下をひたひたと歩く音が聞こえた。

今のように感覚を澄ませていなければ気付かないように、

気配を絶って歩いているようで、不審に思った。



まさか、泥棒だろうか。



考えて、あまりにあほらしかったので止めにする。

第一、こんな微妙な時間に泥棒なんてとんだド素人だ。




廊下を歩く音は徐々に自分の部屋に向かっていた。

まさかとは思うが、念のために気を抜かない。

家の中で今おきているのはおそらく自分だけだろう、

ピンと張り詰めたこの感じはもっとも嫌いな類の空気だった。






自室の障子戸が、ス、と開いた。






「イタチ兄〜……お早う。もうお目覚めですか。」



聞こえてきた声に、思い切り脱力した。

近所の娘である。




……こんな時間にこんな所で何やってる」



至極呆れた声しか出すことが出来なかった。

彼女はちょこんと部屋の中に入ってくると近くに座った。



は、彼女が小さい頃からずっと自分が面倒を見てきたせいか、

すっかりなついてしまっていた。

ことあるごとに、イタチ兄、イタチ兄といっては寄ってきた。

容姿も性格も可愛らしく、周りの皆にも人気者だった。




しかし、こんな時間に一体なんのようなのか。




「やー、こんな時間にイタチ兄が起きてると思わなくて。」

「寝ていたらどうしようとしていたんだ。」

「そ、それはぁー…ま、ヒミツってことで…」



何をするつもりだったのだろう。

今日早く目が覚めたのはもしかしたらこのことを

本能的に感じ取っていたのかもしれない、とさえ思った。




「イタチ兄、さ。」




何故か照れるように言う

わけも分からず、何だ、と促すと、



「今日が何の日か、知ってる?」



と、唐突に質問してきた。




すっかりくつろぎきっていて、うつ伏せの状態の

体の前に組んだ腕の上に頭を寝かせている。

それは、丁度上目遣いと言う位置に値していて、

歳相応の、大きくくりっとした目がより一層可愛く見えた。




「知らんな」




わざと、だ。

くだらない意地のようなものかもしれない。

毎年毎年この日は、毎日たこに耳が出来るほど聞かされている、

自分の将来を期待した言葉がふりかかる。




これからも期待しているぞ。


立派な忍になりなさい。


大人になるのだからしっかりしなさい。





何のプレッシャーも感じないとでも思っているのか?

煩いとか、重荷だとか、考えていることは知らないだろう。

仮にそのことを言ったら父はどんな顔をするだろうか。




今日と言う日は、内心嬉しくもあるのだが、

そんなこともあってかあまり好きになれないのだ。




「今日は、6月9日だよ?」




分からない?


そんな目で見てきたに、横に首を振った。

するとはうつ伏せの状態からそっと体を起こすと、



目、閉じて。



静かに呟いた。

二つも年下な筈のの声はその時だけ妙に大人気だった。

言われるがままに目を閉じる。

悪いことはしないだろう、の性格を知った上でだ。

普段こんな無防備なことはしないから、慣れずに気が焦る。

目を閉じてから数秒後、僅か1、2秒の間だった。




唇に、暖かい感触がして、思わず目を開けてしまう。

なおもは離そうとはしなかった。

背中に手を回してきたから、真似しての背中に片手を回してやった。




暫くして、ようやくは離れた。

まだ確かに残る暖かさが何故か心地良かった。




。」

「あー…今、呼ばないで。」




その言葉の真意が分からずに居た。

はただ顔を背けてこちらを見ようとしなかったから、

の表情を読み取ることは出来なかった。



「何て、悲しいんだろうと思ったの。」

「何が―――」

「何って…貴方の目よ。」




はいたって落ち着き払った声でそう言うと、

ピッとオレの目を指差した。

顔は依然、下を向いたままで。




「何でそんなに悲しそうな顔をしているのか、直ぐにわかるよ。

 理由なんて、イタチ兄がいつも話していたじゃない。

 誕生日にそんな思いをしなきゃいけないなんて。

 私には到底感じたことの無い悲しみよ!」




怒っているのか、同情しているのか、わからなかった。

だけど、どちらにせよ自分のことを思って言っていることだけは分かったから

そっと彼女の肩に手を乗せた。

泣いていることになんて当に気付いている。

震える肩は徐々にその振動数を減らしていった。




「イタチ兄、あたし、渡したいものがあるの。」

「何だ。」

「はい。」



背中の忍具ポーチから取り出したものは、

手のひらくらいの大きさの小さな小箱。




「イタチ兄に、誕生日プレゼントです!」





腫れた目で一生懸命笑っているのが分かった。

心底嬉しくて、箱についているリボンを外す。




「…?」




箱から出てきたのは、ネックレス。

丸い輪の形をしたチャームがいくつかついているだけの、シンプルなものだった。



いひ、とまだ幼さの残る笑みをこちらに向けると、

は立ち上がった。



「おばさんにバレたらちょっといいわけ苦しいから、

 あたしはここらでお暇します。」




軽やかな足取りで、また部屋を後にしようとしたの腕を

無意識のうちに掴んでいた。




「…イタチ兄?――どうしたの…」

、ありがとう」




自分でも何を言っているかわからなくなってしまった。

こんな気持ちでお礼を言うのなんて何年ぶりだろう。



素直に、口からこぼれだした言葉。






「……は、そんなの…あたしのほうがイタチ兄には普段から感謝してるし!」

「好きだ。」

「はは、何言って……」



わらって細めていた目が開いたとき、彼女は正面に捉えた目を見た。

真剣に言ってることが…伝わっただろうか。




は急に顔を赤くしたのが分かった。

…何だか安心させられた。





「それ、嘘じゃないよね。」

「……嘘でこんなこと言うわけが無いだろ」

「じゃあ…両思いだね。」




―イタチ兄だって、さっきのキス、忘れたわけじゃないよね?




いたずらっぽく微笑んだは、かがんでまた頬にキスを落として

それじゃ、といって走り去っていった。





次の日の任務、

煩がってめったに小物をつけないイタチが

首にネックレスをしていたことは大半の同胞から指摘を受けたそうな。



































「イタチさん、そのネックレス、なんだか素敵ですね」



鬼鮫が放った言葉に、イタチは僅かに反応を見せた。

そのときは笠をかぶっていたから分からなかったものの、

イタチの頬は僅かに紅潮していたという。






「昔の…思い出だ。」














































































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アトガキ

誕生日おめでとう、イタチ!

ナルトキャラでもカナリ溺愛のキャラです。

一日遅れになってしまいましたが、

本当におめでとう!

*輝月


☆只今このドリー夢は配布しておりません。
お持ち帰り等は絶対にしないでください。