最初は別に、自分には関係ない人だと思っていた。

小学校の頃クラスが一緒で話したりはしたりするのは普通に、していたのだけど。


なんでもない、ただの幼馴染だ。




あたしは普段、別にモテるでも嫌われるでもなく、同じクラスには友達がいて、

ごくごく普通の女子中学生をやっている。

自意識過剰な時期といわれるけれど、彼…うちはサスケから好かれていると思ったことは一度も無い。

好きだと思ったことも、一度も無いけれど。

ただ、成績優秀、容姿もバツグン、運動も出来るサスケがモテるのは前から知っていたし、

私もかっこいいと思ったことはあった。







けれどやはり、なんでもない、ただの幼馴染だったのだ。















これもまた、なんでもない、ある一日だった。


「あー終わんないッ!」

、ちょっとここ教えて!」

「分かったーここ終わったら見てあげるっ」


提出期限最終日の放課後、あたしたちは一生懸命課題をやっていた。

それも、あたしが苦手な家庭科の縫い物と来たものだ。


、お前の見せろってば!」

「あたしのへたくそだからいやですー」

「……貸してみろ、ウスラトンカチ。」


そこで横から口を挟んできたのは、見るに見かねた様子のサスケ。

彼はもうとっくに課題なんか終わらせて、今だって帰ろうとしていたところだ。



「サスケ器用……なんか、お母さんみたい。」

「うっせぇな。こういう物はコツと性格だ。コツと性格。」



ナルトの持っていた布を取り上げると、縫い目が粗くてビラビラになっていた部分や、

玉止めがしっかりできていなかったところなどを全て補修し終えてナルトの手元にぽんと返した。



「す、すっげぇ…あんがとなァサスケ!」

「…フン…」

「ねーサスケ君、お願いがあるんですけど!」



そのまま帰ろうとしたサスケをあたしは呼び止めた。



「…もうちょっとここにいて、手伝ってくんない?」














「あー終わった終わった!ありがとーサスケ!」

「…別に、お前のは殆ど手伝ってねぇだろ」

「まぁナルトにつきっきりだったようなもんだからね…。」


教室は大惨事だった。あっちこっちに針が落ちるわ糸は絡まるわの大騒ぎ。

結局残っていた皆と、サスケも巻き添えにしてそれを全部片付けたら外は真っ暗だった。

帰る方向が同じあたしとサスケは、歩いていくうちに二人きりになった。



「あ、雪降り始めた!」

「…さみーッ」

「サスケ、防寒具何も着て無いじゃん。…寒いのは苦手だって、言ってなかったっけ?」


学ランに手袋のみと言う薄着のサスケに思わず突っ込んだ。


「上着着るともごもごして嫌いなんだよ。」

「…プ…強がり…」

「んな…!」


サスケが何かをいおうとした時、丁度分かれ道に差し掛かった。


「あ、じゃあここで…」

「…おい、」


手を振ってバイバイ、と言おうとしたら、


「……送ってく。」

「え?」



思わず、聞き返してしまった。






「(サスケって親切だよなぁ…彼女になる人が羨ましいや)」


理由を聞けば“暗いから”。

サスケらしいといえばサスケらしいと思ったが、色々話も出来たのでよかったなぁと純粋に感じていた。



前々から聞いていたけど、サスケは結局ここいらで一番の進学校に行くということも、聞いた。

それはあたしも前狙っていた学校で、体験入学も行った。

けれど、ここからは電車を使わなきゃいけなくて、そして学力も高かった。


諦めて、近場の高校の推薦を受けることにしてしまったあたしには、



行く可能性の無い、学校だった。










サスケは次の日も、その次の日も送ってくれた。

帰る時間が同じで、帰る道も同じだから、必然的に一緒になるだけなのだけど、

分かれ道に差し掛かると、一言「送る」と言ってくれる。


最初は、ただ親切な人だとしか思わなかったのに

いつの間に、だろうか。


本当にあたしは気付かないうちにすっかり  彼に落ちていたの だ 。




でも、でも、


同じクラスにはもうなれない。同じ学校には通えない。

サスケは電車を使わなきゃいけない遠くの進学校に、行くんだから。



「がんばってね」



うそつき。うそつきうそつきうそつき!


本当は同じ高校受けて欲しい、何て、間違っても言えたことじゃないけど。

頑張って欲しいと思ってるのだって、全く嘘じゃないけど。


  ああ、 ばかだなぁ。



  もっと勉強、しとくんだった。


意識した頃にはもう、遅かったんだ。




家に帰っても受験勉強に身が入らなくて、それどころか「受験」と言う言葉を聞くだけで拒否反応が出る。

もっとも身が入らないのは、推薦の願書だった。こんな高校行きたくない。

決してレベルが低い高校ではないのに、そんな風にけなしてしまう。


理由なんて言わなくても、言われなくても、分かっている。










今日も、サスケは家まで送ってくれた。別に暗くも無いけど、送ってくれる。

帰る時間が一緒で、帰り道が一緒だから、なの?

理由は、それだけなの?


期待しちゃだめなんだよね?


隣を歩く彼に、何度その疑問を持ったことだろう。



姿を見るだけでどこか安心する自分がいるのに、

彼のことを、もうすっかり好きなはずなのに、




サスケは凄く近くに居るのに、




どうしてもどうしても、









の手を伸ばせない。
付き合う前から別れることを考えてしまう、なん、て、










































実話だったり、違ったりする。(え、どっち