音楽を奏でるオルゴール。





緩やかな音楽。











































一緒のメロディー


-前編-








































♪〜♪…♪
















「ん?なんだこりゃ」














昼寝をしようと、いつもの芝生に横になる。
その時ついた手に、コツリとあたるもの。

小さな小さな、かわいらしい箱。

そこからは、ゆっくりした調子の曲が流れていた。


気になって、手にとって見ると、どうやらオルゴールのようだった。






「…いい音だな…」





ふたを開けると、音が出る仕組みだ。


しかし、またなんでこんな所に。

不思議に思い間ながらも、もう一度ごろりと芝生に横になり、
オルゴールの音を聞きながら








寝てしまった。




























































はっと眼が覚めれば、もうあたりは暗かった。




―いけねぇ…寝すぎちまった。



俺は重たい頭を起こして、あたりを見渡す。




と、一面花畑の風景に出くわした。





「……!?」




寝起きの上に場違いな景色を見せられてすっかり困惑し、
固まってしまった。

確か俺は、芝生の上で寝てたんじゃなかったか…?
しかし今確かに俺は、花畑の真ん中にいる。
見渡す限り、花・花・花。

どれだけ遠くを見ようとしても、視界に入るのは
春色の花ばかり。






♪…♪





ふと、聞き覚えのある音楽が聞こえてきた。





「…これ…」





手元には、すでにオルゴールが消えていたが、確かにそのメロディーが聞こえる。
…音と共に、風景に光がさしてきた。


そのとき、俺は初めて知った。




唯一、一本はえている巨木の陰に、一人の少女がたたずんでいるのを。

















……こんなファンタジックな世界、見れば見るほどありえねぇ。

ありもしないものが次々と現れて、俺が頭を働かせ結論をだすより先に
また不可解な出来事が起こる。


頭が、ついていかない。







考えんのも…めんどくせー…







取り合えず起き上がる。


…忍服のままだったから多少のクナイと手裏剣はあるが…


彼女から、こちらに向けられた殺気は微量も感じなかった。







めんどくせー戦いには、ならずにすみそうか…。









俺はなるべく花を踏まないように気を配りながら、少女に近づく。











「てめぇ、何もんだ?」



木のところまできて、ようやく少女の姿をとらえて声をかける。
くるりと、振り向いた少女の顔は、思ったより大人びてて。

小さな子かと思ったら、俺と同じくらいかもしれない。



「……どうして此処へ…?」


眉毛を下げて、不思議そうに問う姿からして、
今まで此処に来た人物は極僅かなのだろうと予測した。

「目が覚めたらここにいた。」

…へぇと言うと、少女は座り込んだ。




下に咲く花にかこまれ、たまにやってくる蝶と戯れながら、
少女は花を摘んだ。綺麗な色のものばかりを選んで、つんでいた。


俺は近くまで歩み寄って、少女の隣に座る。






「お前、名前は?」

「…。」

「そうか……。」

「あなたは…?」

「俺はシカマル。」

「そう。」






また少女は下を向いて花を摘み始める。俺も一緒になって、花を一つ摘んだ。
途端、花は枯れてしまって、砂のようにぽろぽろと俺の手から崩れ落ちた。







「…!?」

「あ、ごめんなさい。先に説明しておくべきだったわね」

「…一体何がどうなってんだ…」

「此処の花たち、私以外の人間を嫌うのよ」

「…?」

「そういう場所なのよ、ここは…。私以外の人間を、此処のものは全て嫌う。」







悲しいのか、少女は先ほど花が崩れ落ちたあたりをそっとなで、そしてシカマルのほうへ向き直った。
手を出して、と言い、何をするかと思えば俺の手のひらにその砂をあけた。
さらさらとの手から俺の手へ移動する砂。





「でもね、この花たちだって、嫌いたくてで嫌ってるわけじゃないの―。」





は俺の方をちらっと見、砂を握るよう促した。
俺はにされるがまま手を結び、中にあるざらざらとした感触を感じながら
一体何がしたいのか、とのほうを見る。











「シカマル、もう一度此処へ来たいともしも思ってくれたなら…」











は、俺の目を真剣に見つめた。













「…この砂、そして、貴方がいた場所にあったもの。どちらも絶対、なくしてはだめよ」








































「何がどうなって………ん?」






気がつけば、そこはいつもの芝生の上。
唯一つ、さっきと違うことといえば……





「シーカーマールーッッ!!!やーっと見つけたわよー!?」










いのが凄い形相で俺をにらみつけていたことと











「お前、また寝てたのかよ…ったく」











呆れ顔のアスマが隣にいたことと











「いくらなんでも演習の途中で寝るのはナシだよ!」













菓子を食ってるチョウジがいたこと。











俺は今まで、夢を見ていたのか?
回りには、もう何処にもあの花畑は見当たらない。一本の木も、少女も。

全部、全部夢だったて言うのか?




―と、立ち上がろうとしたとき。
自分の手がしっかりと握られていることに気がついた。





…はは、まさかな。




















手を解くと、そこには。


























ただ一塊の砂があったのだった。




















































「あれ…シカマルこんなもの持ってたっけ?かーわいーいっ」



いのがニヤニヤしながら、俺の隣に落ちていたオルゴールを拾い上げた。
確かに可愛らしく、普通は俺みたいな男が持つもんじゃなくて
女の持ち物だってことは一目でわかる。






「うっせーな、母ちゃんのだよ」






いのからそれを奪い返すと、俺は立ち上がり、ポケットに手を突っ込んで
さっさと家へ帰ろうとした。












ガシッ













「待て、シカマル」















「あ?」



















振り向けば、心底あきれたようなアスマが立っていた。
俺の肩を掴んで話そうとしない…。



こいつぁマズったぜ…。





「お前は、今日サボった罰として…明日はこいつらより一時間早くきて修行してろ。
 もし俺が一時間前に集合場所に着く前にお前がいなかったら…分かったな?」


「へいへい…。」





アスマはこのとき、もうかくれんぼ演習などと言うシカマルを自由にしてしまう演習はこれきりで
やめにしようと誓ったのだった…。









俺は生ぬるい返事だけ返すと、また歩き出した。
























今日は昼寝をたっぷりしたはずなのに随分とまた疲れた。





















家に帰ったら、また寝るか。



























あいつの夢でも、見れるように。









































































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