「シカマル、もう一度此処へ来たいともしも思ってくれたなら…」















































「…この砂、そして、貴方がいた場所にあったもの。どちらも絶対、なくしてはだめよ」



















































一緒のメロディー


-中編-
























































家に着くとシカマルは、ドサりと横になる。




「(ああ、今日は色々めんどくせー一日だったなぁ…。)」



目を閉じると、一番初めに浮かぶのはまず「あいつ」。
名前は確か……って言ってた。

あたりは、一面花畑。



シカマルは手に握っていた砂を、取り合えず布にあけた。
さらさらとしていて、軽い。
もともとはあれほど美しい花だったのだから、例え砂に身を変えたって美しさは変わらない。






まるで花のようだった彼女を思っていたらシカマルは、
いつの間にか眠くなってしまったのだった。





「(どうせ明日早いんだし、もう寝るか。)」





さっき寝たばかりだというのに、もうこんなに眠い。

心の中ではいつの間にか、彼女に会いたいと言う気持ちも背中を押しているようだった。

そっと、右手でオルゴールのふたを開ける。






♪…♪〜♪






そうなんだ。










俺は、










もう一度

























会いたいんだ。





















♪……♪…





























「…ん?あぁ、またか……。」

身を起こすと、見覚えのある風景が出てきた。
一面の、輝く花畑。そしてそびえる一本の木。


「シカマル…」






木の陰からひょっこりと顔を出したのはで。

驚きのあまり、ドキりとしてしまったのは不覚だった。



「よぉ、また会ったな…」

「来てくれると思わなかった。」

「…?」

「だって、男の子から見たらこんなファンタジックな世界、興味湧かないかと思って…
 でも、シカマルはこうやって来てくれた。すっごく嬉しいの。」






は何も言わないシカマルの顔を覗き込んで、にっこりと笑った。





「…ありがとね…!」

「!!」



吃驚して後に飛びのいて、思わず彼女から顔を背けてしまった。
一方のほうはといえばどうしてシカマルがあわてて飛びのいたのか分かるはずもなく、
すごく不思議そうにシカマルを見つめていた。








―吃驚した…






女ってもっと、怖いもんじゃなかったか?









そりゃ、ヒナタからサクラ、いのまで女子の性格は様々なのだが。
シカマルにとって見れば女子というものはどちらかといえばサクラやいののようなイメージなわけで。



しかしここにいるは、ヒナタにも、いのにも、どちらにも属さない。






―なんなんだ?こんな女、見たことない。
 一体、何がどうなってんだよ…めんどくせー…





そっと、のほうを見る。
は、俺とは反対方向、つまり木のある方向の空を仰いでいた。
たまに吹く春風のような暖かい風が、彼女の肩まである髪を揺らす。





「空に浮かぶ白い雲…呑気なもんよね…」

「……」

「私、雲見たいに自由に暮らしたいって思っていた時期があったわ。」

「そしたら、ほんとになっちまったって訳か。」

「そう。そのとき私は…いじめにあっててさ。色々…だから
 誰にも邪魔されない、自分だけの自由な世界がほしかったの。」










その代わり、代償を払ってもらった、この空間の中でしか自由になれないのだけれど。
















命と言う、代償を。





















願いがかなって、結局はこれでよかったのか分からない。
確かに、自由になりたいと思ったけれど、
こんな狭い、しかも一人きりの孤独な世界だったら、
少し不自由だっていいから、みんなといたいって思ったかもしれない。


いまさら何を願ったって、一度かなえてもらった私はもう二度と
願いをかなえてもらえるチャンスなんてないのだけれど。






それでも、願っちゃうよ。






せめてこの、私が作り出してしまった世界に訪れた人に


何か、してあげたいと。










はごろりと寝転がると、シカマルも、と手招きする。



「俺が寝たら、花が…。」

「大丈夫。この前みたいに根っこさえ残っていれば、花はまた生えてくるから。」



そうか、といって俺も寝転がる。
夢の中で寝るって、どういうことなのだろうか。




「ね、シカマルは雲嫌い?」

「いや、むしろ大好き。」

「そう、良かった…」





そこまで言うとは体の向きを変え、俺の方にごろりと横になった。
俺が手を触れようとすると、は待って、と俺を制した。








悲しそうな顔で。










「私、貴方にふれられないの。」

「……?」

「私、貴方にふれたら砂になってしまうのよ」

「んな…」




まるでそんなの、ここにいる花たちみたいじゃねーか。
ふれたら砂になってしまうなんて。







「…おいお前…」
















は、泣いていた。





















自由より、大切なものを知ってしまった彼女。























今あふれ出しているこの感情は




























自由を願ったあのときより、ずっと…



































ずっとずっと、大きかった。



























































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