「私、貴方にふれられないの。」






































「私、貴方にふれたら砂になってしまうのよ」



















































一緒のメロィー


-後編-























































ぽろぽろこぼれる涙を、シカマルはただずっと見守っているしかできなかった。

自分では何もできないと…何もしてやれないと。

そう、思ったからかもしれない。






目の前にいる少女は確かに人間で、
年だってオレと大差ない。
なんだってその一時的な願いに魅かれて
この世界に来ちまっただけで…



自分で努力をせずにかなえる願いなんて、


その代償は大きいに決まっている。






けど、






もう、戻れないことは彼女が一番知っている。

その時自由になりたいと思った気持ち。

今どうであるにしろ、

その時は命を捧げるほど

かなえたい願いであったのだから。


















、そろそろ泣き止めよ。」

「…ごめっ…ひっく」

「…ったく、めんどくせーな…」




シカマルは、を起きるように促すと、自分も起きて隣に座った。




「オレは今、お前に触れないんだろ?だから、どうしてやることも出来ねぇけど…
 せめて、言葉で…な。……めんどくせーけど。」



―そのときは、初めて俺の顔をちゃんと見てくれていた気がした。

今までは、何かにおびえるような目をしてこっちを見ていたから。







こんなに儚い存在だと知った後の彼女からは

今までの、ちょっと不思議な少女と言う印象は消えていた。











こんな短い時間の中で、いつの間に…

この胸の中を占めている想いはなんなのだろうか。

いつの間に、こんなに。



















































のこと、好きになってたんだろう…




















































「オレ…のことが、好きだ」






















































こんな風に想いを伝えるなんて、馬鹿みたいだって思ってた。



そんなの、違ったんだな。






こんなに苦しくて、張り裂けそうな思い。
ちょっとしたことで傷ついてしまいそうな、弱い心。



いつから、こんな風に


変わっていたのか。

























♪…♪〜♪





















気がついたら、彼女の手によって扉の開かれたオルゴールが鳴り出していた。
この上なく、オレを安心させる音だった。








「シカマル、私も大好きよ。初め見たときから、本当は…」















後は、もう言葉にならなくて。

















泣いているをそっと抱きしめたかったけど

砂になるなんて知ったらそんな勇気なくて。



















































そしたら、はこう言った。




















































「シカマル。私、貴方と一緒の気持ちを持ってるって分かったから、もう、どうなってもいい。」





















































そう、もう自由なんかよりも大事なものが何か、よく分かったから。

一度使ったこの命よりも、大事なものを。

























































一度きりだって、十分だから、だから…。





















































「だから、私を今すぐ、抱きしめて…くださ」




















































そこまで言ったとき、シカマルは私に口付けた。




















































静かに、とても長い時間に思われたけれどきっと本当はとても短い時間で。

こんなに幸せでいいのか、って思うくらい綺麗な時間だった。








一度唇を離して、今度は強く抱きしめてくれた。



















































さらさらとこぼれだす、私の体。



















































シカマルは、ためらいも無く、ぎゅっと抱きしめてくれた。







もう、後悔なんて見えないように。






こぼれだす私の体を極力見ないようにしながら、






力いっぱい、力いっぱい。






















































「ありがと…シカマル、本当にありがと…」



















































オレは、最後に彼女がせめて救われたことを。
































私は、シカマルが私のことを忘れないでいてくれることを。























































二人が祈る中、の体は服ごと完全に砂となって消えたのだった。






















































「…お礼なんて、いらねぇってのに…」





















シカマルは先ほどまでであった砂を、ぎゅっと握り締めた。

砂に落ちる涙をこらえきれずに流しながら、を想った。

いつの間にかこんなにも、気持ちは大きくなっていたのだ。





















































「ん…んん…」











ぱち、と目を覚ますと、そこはやっぱり自分の家だった。


―どうやら、目が覚めてしまったらしい。




起き上がろうとして、気づいたこと。







やはりオレの手には、砂が、握られていたということ。







それも、先ほどのように手に溢れるほどの砂ではなく、
ほんの一握りの砂だった。

家の明かりの下で無限の色に輝く不思議な砂を
オレは暫く眺めた後で、つぶやいた。














「またな、。」






















そのまま、元は花だった砂も一緒に

窓から、風に乗せて飛ばした。





「これでお前は、本当に自由だな。」





そう、付け足して。





















































その日シカマルが、アスマとの約束を破ってさらに重い罰を受けたことは





また、後の話……























































『ありがとう、シカマル。』



































『きっと貴方は、私が今まで会った中で、一番好きだった人よ。』































『だから、もうこれは必要ないでしょう?』





























『こんなもの無くったって、貴方はきっと私のこと…』



























『忘れないでいてくれるって、信じているから。』



































シカマルがアスマに色々と罰ゲームを実行させられている頃、

そのとき吹き抜けた春風に乗って…







元はオルゴールの姿だった砂が、ふわり、と飛んでいった。




























♪…〜♪♪






























「……?」









いま、あのオルゴールの音が聞こえた気がする。











きっと、「あいつ」の仕業だな…。


























































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あとがき

シ、シカマル夢です!(ドキドキ)<何故
シリアスなものを書いた後に馬鹿っぽいあとがきを書くのはなんとも…。
さて、この夢ですが。(切り替え早っ)
色々な部分の意味を、分かっていただけたでしょうか。
色々詰め込みすぎたせいもありますが、やはり表現力不足で
なかなかわかりづらかった所も多々あるかと思います。
そして何より、シカマルで無かったことをお許しください。(爆)

イメージ的には、シカマルの純粋な初恋、ということでした。
最初からグロいのとかバカっぽいのは個人的に許せなかったので…(汗)
何はともあれ、読んでくださったさん、有り難う御座いました!